1.概観


電波と報道に対する哲学が不足し、専門の「第三者機関」がないことが下記の問題を惹起した、と思っている。電波行政は今も(その他省庁に属さない雑務を扱う)総務省管轄となっている。


① 民放に大量免許を与えた利権的政治―(昭和32年大量34局ものローカル地上局を一挙に認可した田中角栄郵政大臣)―それが結果的に経営的に不安定な地方局を乱立させ、大手系列支配態勢が出来上がった。


② 社会的インフラとしての役割を持たせるべきCATVやCSへの認識を誤り、NHKに徒に時代遅れとも言えるBS広域放送に走らせた。(BSとCSは基本的に衛星利用では同じ、現在CSは、「有料放送」として専門チャンネルを数十チャンネル放映しているが、「民放無料」の壁に阻まれ苦闘中、一方NHKはBS「2波」を使って2チャンネルの有料放送実施中)


③ CATVの普及が進まなかったのは日本の官庁の縄張り争いと、縦割り組織の弊害だった、と考える。地域放送・通信の認可官庁が複雑で、且つ道路占有は旧建設省で、電柱使用も電力は通産省、電話は郵政省、等、所管も手続も煩雑で、それらがネックとなりインフラとしての有線の敷設が遅れた。それに上記2項目の要因が加わった。


④ 放送機関への過剰な政治家の介入を許してきた。
放送全般への政治介入、行政・人事・編集方針・報道内容までも。


⑤ 最近民放の株の持ち合い、名義借りの問題が噴出している、マスコミ言論機関として「中立性」「主体性」が問われている重大事だ。設立当初からの経緯があるとすると深刻な監督官庁、並びに業界全体の問題だろうと思う.(総務省調べでは全国のテレビ局127社中、違反が50件だと言う)


結果的に、日本の場合、マスコミの中でも最も影響力の強いテレビが、過去長い期間に亘って、日本の民主主義の発展を遅行させ、阻害する役割に加担して来たと言われても仕方ないだろう。