銀座4丁目


義弟から電話があったのはそれから日を措かずであった、「今日、銀座を歩いていたら小さいビルに貸室あり」との看板が出ていた、詳しい事は聞いてみたらどうだ」だった。


早速出掛けて見たら、確かに看板の出ているビルが見つかった、広い昭和通に面した「かわいいビル」ながら外見は総ガラス、螺旋系の階段が斬新に見えた。


早速、家主の社長に会って交渉してみる事にした、オーナーは手広く紙の卸問屋をやっていて、苦労人ながら話の判る方であった。


4階までは既に入居者が決まっていて5・6階が空いている、と言う。それでも場所柄もあって規定の家賃や保証金は思ったよりは高い。


自分は「最上階の6階」でよいから「何とか安くして欲しい」と交渉に入った。勿論自分の経歴や今後の仕事の概要・見込みを話した上での事である。


新築したばかりのこのビルには弱点もあった、6階建てビルだが、エレベーターがないのである、螺旋形の72段の階段を登らないといけない。


オーナーは貸しビルを任されている息子を呼び、「何とか協力をして上げよう」、と言ってくれ、最後に「しっかりやんなさい」と言ってくれた。


息子との交渉で、最終的には保証金は義弟の保証だけで可、家賃もほぼこちらの言い分を聞き入れてくれた。


案内された部屋は間口2間弱だが奥行き4間半、トイレ・流し場・冷暖房も付いている。何よりも片側一面が総ガラスは明るい。


この辺りは、昔は木挽町と言っていたのが、ここも銀座でそれも4丁目、義弟の保証人の諒解も得てスタートする事になった。