「記憶喪失」


その際、実に不思議な体験をしたのだが、今の家の間取りと全く違って見えたのである。それは紛れもない、4−5年前まで住んでいた前の家の間取りであった。寝床に入って薄暗い部屋の天井・四囲を見回し、今の自分の居るのさえも腑に落ちないでいた。


ひっくり返った折に居間の机の角にしこたま後頭部をぶつけたようでたんこぶが大きく膨れ上がり、外傷もあったのだが、何時の間にかまどろんでいた、勿論翌日からはその折の事は全く記憶の外にあった。


お医者さんに言われてその事を思い出したのだが、「ドスン」と頭を打った瞬間から前の3−4年の記憶は完全に「記憶喪失状態」で「飛んでしまっていた」らしい。


手術後、お医者さんから頭部に100CCの血が溜まっていて頭脳を圧迫していて、何時破裂してもおかしくなかった、万一「破裂する」と大変だった、と仰る。それこそ「一巻の終わり」だったようなのだ。



(写真は東京・品川神社境内の満開の「寒桜」)