トルコ紀行(2)インフレの怖さ

新リラ

この国トルコは最新統計で人口6700万人(広さは日本の2倍ある)、国民一人当たり所得は3000ドル(日本円で30万余)公務員の月給が日本円で約35000円に当たる。外貨獲得面では観光業が主要産業ながら、農業は100%自給体制が整っていて自立可能の国であるが反面工業化が遅れ失業者が1500万人もいる。


遂にと言うべきか、遅すぎる、と言うべきなのか、「デノミ」の事は旅行中ちょっと小耳にしたのだが、いよいよ本年年初から「新リラ札」が発行されることになった、と言う。何と、今度発行される「新リラ」は従来の100万リラを一挙に1リラに切り替えるものだと言う。従来のお札の呼称を1.000.000分の1迄に切り下げて「1」としてしまうと言うのだから随分思い切った処置である。新トルコリラは、1・5・10・20・50・100の5種類、他に小額コインが6種類である。(写真はデノミ後の新紙幣、単位は100万分の1となった。尚、従来の札は当分併用するそうである、図柄は同一・トルコ中央銀行から提供のもの)
            
 
ところでわが国の事だが、最近日本の国・地方の財政が急激に悪化して債務(借金)残高が1000兆円近くと膨らみ続け(これは1億2千万人国民一人当たり、赤ん坊まで833万円もの借金)、とても払い切れないので衆知の事だが、予てから政府及び自民党内でここ何年にもわたって「調整インフレ論」が底辺で常にくすぶり続けている。お札をどんどん発行し「政策的にインフレを起こし」て、「あわよくば実質的に国の借金を棒引き」にしてしまおうと言う魂胆である。

 
現実に、近年の日本の財政は一向に健全化への対策はなされぬまま相変わらず赤字続きで実質的に破綻状況が続いている。「改革」「改革」とは掛け声だけで、ここ何年も歳入(税収)が40兆円しかないのに財政支出は倍の80兆円にもなっている。因みに、つい先日小泉内閣が16年12月暮れに編成した今年度平成17年度の予算は、純歳入(税収)は44兆円、一方国の一般歳出は47兆円、それに借金の利払いの金利等の国債費が18兆円、その他に地方交付金16兆円となっている。その結果、不足分の34兆円余は国債発行でまかなう予算となっている。このように、この国では債務(借金)が雪ダルマ式に毎年増え続けているのだ。


こんな借金地獄の状態が何時までも続くはずもないが「万事先送りの姿勢で」どなたも余り触れようとしない。「調整インフレ待望論」が底辺にあるからだろう。然し、インフレ政策がどのような結果を招致するかはトルコの実態を見れば実に明白な事である。インフレで最も悪いことは、少数の「権力者・才たけた人間」だけが「うまうまと太り生き延び」、「貧富の格差が天と地のように開く」事である。同時に「勤労意欲とか道義・社会正義といった国家・民族としての社会規範の根幹の部分」が失われ、国家としての連帯感がなくなってしまう事ではあるまいか。