テレビ―英国BBCのこと−①

okamakoto2005-01-16

NHKが今揺れている。放送番組に政治家が圧力を掛け、改変したのではないか、が問題となっている。


担当のプロジューサーが告白会見し、当の政治家二人とNHK幹部はその事を真っ向から否定したのだから事は「放送と政治」の問題である。その事で日本のNHKは元々英国のBBCを手本にして設立された経緯があると聞いているので調べてみる事にした。(参考書籍「BBCイギリス放送協会」-パブリック・サービス放送の伝統―東信堂「蓑葉信弘著」他)
 

BBCは1922年民間会社(company)として設立されたが5年後、時の皇帝ジョ−ジ5世から公法人(corporatino )の特許を交付された。総支配人として一般公募で採用されたのが「ジョージ・リース」、初代会長となる人物である。彼はこの未知の仕事に「放送は公共的利益のために組織さるべきで、放送水準の低下を避けるには広告を財源としてはならぬ」と主張しそれを理念として貫き通し、現在までBBC会長は13−14代になるがこの理念は踏襲されてきている。


勿論、英国には放送法の下、議会の中に「放送調査委員会」始め各種委員会があって常時真剣な討論・検討が為されていてその間の80年余の間に商業放送も並立される等、様々な政治との軋轢、論争や抗争があった。それはジャーナリズム精神の本質に迫る緊迫した場面の連続といってよい。先ず最初の試練は1,926年の炭鉱労働者の争議に端を発した「ゼネスト」に対する対応で、政府はこの機会にBBCを接収し、報道を国家管理の下に置こうとした。「公平な情報提供」に努めたことがこの思惑を阻止する事となった。

 
1932年、英本国と海外自治領・植民地を結ぶ放送として「BBC国際放送」誕生、1939年第2次大戦勃発、当初からBBCに批判的だった1940年登場の首相チャーチルは「戦時放送」のため何度も接収を試みる。チャーチル自身はBBC放送を通じて対独戦で危機的だった当時の国家の非常時に、マイクを通じてに国民に本土死守を誓い、すんでの事で対独戦勝利を掴んだ。BBC放送はその頃から「正確で公正で質の高い放送」として「聖書よりも信頼される」存在として国内だけでなく広く欧州内でも信頼を勝ち取って行く。1946年「BBCテレビ放送」再開 (1936年世界初のTV本放送開始したが戦時中政府から軍事上の理由で中止を命じられ7年間休止した)


BBCの放送独占は不動のものと思われていたその矢先、1946年「BBCの放送独占は自由に対する潜在的脅威である。問題は政治の事ではなく自由の事だ、自由とは選択出来ると言う事である。放送の独占は自由の否定になる」。この意見を新聞の投書で堂々と発表したのは誰あろう。初代会長リードの後を引き継ぎ退任したBBCの2代目会長F・オグルビ‐氏なのである。