テレビ―英国BBCのこと−③

okamakoto2005-01-18

NHKの今回の直接の問題は「報道機関と政治」の問題だが、根本的には日本の民主主義がこれを機会に育ち得るか、再構築出来るかが正に問われているのだと思う。報道機関はそれ程国民意識の向上に大きな役割を果たすものだと考えるからだ。BBCの歴史を見ていると真の民主主義が根付くまでには息長い時間を掛けているし、様々な危機と試練を経て―紆余曲折を経ながら―今日の「イギリスが世界に誇り得る国民的資産」を築き上げたように思える。だからこそ、NHKはこの際先人に学びつつ、この「ピンチをチャンス」として捉え、組織改革の実を上げるべきではないかと考えるのである。


先人に当たるBBCの「経営委員会」は「経営の最終責任を負う」とされている。具体的に箇条書きにすると下記となる。(ウイットリー経営委員長文書)
 ①経営委員会は国民の利益の受託者である。
 ②経営委員会の責務は全体的なもので、個別具体的なものではない。
 ③日常業務執行の責務は理事会(会長以下執行部門)にある。
 ④経営委員会には放送の目的が達成されているかどうかを確認する義務がある。
 ⑤経営委員会は理事会と討議の上、主要な方針や財政に就き決定する。
 ⑥経営委員会はBBCの行為に最終的責任を負う。(当然会長の任免権も持つ)
勿論上記に至るまでには、過去、会長(執行部門)と経営委員長との様々な軋轢もあった、その結果としてこのように経営責任を明確化したものであった。(尚、ウイットリー経営委員長は元下院議長の経歴者である)


NHKは「現場へ他所から干渉」を受けたかどうかが問題になっている。上記のような組織になっておればNHK会長以下「現場は国民の方を向いて仕事をし」、その結果責任は「経営委員会」が受けて立つべきものである。NHK経営委員は今回の事で「経営委員報酬700万円」を返上し、乃至は減額をして責任を取る事、としているやに聞いているが、むしろイギリスBBC並みに現行を倍額にしても、その代わりそれだけの重責を果たせばよいのではあるまいか。(因みにBBC経営委員長の年額報酬は1400万相当で総て公示されているとの事である)それに付言すればBBCの受信許可料は2000年現在でカラーTVで年額104ポンド(約18200円)、白黒TVで34.5ポンド(約4.800円)である。受信許可料は「無線電信法による「受信局設置の免許料」との考え方である、との事。


NHK首脳陣が「政治に癒着しジャーナリズム精神を喪失した状態」であるとすれば、経営哲学と経営責任を持った「経営委員会」の出番である。組織を一新し、国民の意識と文化教養面の向上に寄与する新体制作りが、今最も求められるものではなかろうか