スウエーデンに見る③福祉

okamakoto2005-01-28

 四半世紀前―1980年訪問時と、今回訪問で気付いた点は、例えば老人介護制度の中で、以前は「公的施設の充実」だったが、今回聞いた処では「ハード面の介護施設は既に充実した」、むしろ今後は、「自宅での健康な老後生活へのヘルプ」だと言う。国・自治体(コミューン)はその面での「ヘルパー制度の充実強化」に努めている、との事だった。「本当に人の尊厳を重んじ、老人に優しいのは自助に対する助けだ」の考えだ。


「自宅介護」と聞くと我々は、日本的に「家族介護」を想像するが、北欧では既に「老人・体の不自由な身障者等の介護は社会の責任」との考えが定着し、「家族介護は否定的」なのだ。女性の社会進出が当然視され、実現しているこの国でこの方向に変わったのは「家族の時間的・経済的負担」「身内同士での遠慮や甘え」等につき長年の経験から到達した帰着なのだろう。この事は出産手当・育児手当・児童手当・住宅手当・保育所システム等の手当制度の充実となって現れている。「出産休暇制度」では、妻だけではなく夫婦共、夫にまでも1年間の休暇が与えられるのだと言うから、我々にとっては驚きである。


 この考えの「基本理念」はこうだ、①高度に発達した経済社会では少子高齢化は不可避であり「社会の宝」を生み育てる負担は社会が負うべきだ。②経済成長を持続させるには女性の労働市場への進出が必要、その負担の一部は当然社会が引き受けるべきである。③女性の社会進出に比例して「少子化傾向」は不可避、そうならないよう社会で助け合わなければならない。


 因みに、スウエーデンの過去35年間(1965年から2000年)の就業推移で最も顕著なのは公共部門地方公務員が15%から32%に17%も増加している事である、又、コミューンの部門別公務員は33%で、児童福祉18%、教育22%と合計51%と「女性の社会進出」が著しい。当然国会議員・大臣共半数は女性である。


 スウエーデンは「高福祉・高負担」の国と言われる。事実25年前に訪問した際もその実感を持った。今回、北欧4カ国を巡ってその感を強くした。参考までに日本及び北欧諸国の対国民総生産(GDP)対比での社会保障費の比率は下記の通りである。(2000年実績、単位GDPに対する%、尚、資料は岡沢憲芙著「ノルウエーの経済」・藤井威著「スウエーデン・スペッシャル」より、日本は「人口問題研究所」統計資料による」)

            国民総生産(GDP)中に占める社会保障費の割合(%)

 日本    スウエーデン    ノルウエー   デンマーク    フインランド 
 20.6     31.7        24.8       28.0      24.5          

 上記のように北欧諸国は公的福祉割合が日本に比し高い。(尚、我国GDP数値は 378.4兆円、社会保障費合計額は 78.1兆円、 <内訳、医療費26兆円・年金41兆円その他福祉費10.9兆円>である。)