スウエーデンに見る ⑧隣国


北欧と言えば現在は8カ国となっているが、元々我々が「北欧」で連想するのはスカンジナビア半島の陸続きデンマーク、ノルウエイ、スウエーデン、フインランドの4ヶ国である。その中でもデンマークとスウエーデン両国は歴史の中で同君同盟を結んだり独立運動で闘い合ったりした因縁も深い憎愛相半ばする仲であった。(写真はデンマークコペンハーゲンでの皇太子結婚式当日の祝賀に沸く街の風景)


「カルマル連合」成立で、スウエーデンがデンマークの統治下に入っていた1520年11月の事である。デンマーク国王クリスチャン二世がスウエーデン国王として君臨する戴冠式ストックホルムで華やかに挙行され、祝宴にはスウエーデンの貴族・重臣多数が招かれ列席した。祝宴の最終日、突然王宮の門が堅く閉じられ、王の命令で即席法廷が開かれ全員に「死罪」が宣告された。直ぐに広場に連行された82人は(実際は200人以上だとも言われる)全員斬首された、これが「ストックホルム血浴事件」である。スウエーデン独立運動を事前に抹殺しようとするデンマーク王の陰謀であった。この事件は逆に後の独立の英雄「ヴァーサ」(初代スウエーデン王)を輩出する切っ掛けとなったのである。ヴァ―サーは父や叔父の復讐と、「独立の鬼」となって長年掛って反乱軍を組織し、後年遂にスウエーデン独立を勝ち取る事となった。


さて、現在広くヨーロッパ25カ国は、かっては宿敵同士のドイツ、フランス、イギリスを始め、つい先日まで東西の壁で対立していた東欧諸国までも含めて「怨讐を越えて」統合国家、EU(ヨーロッパ連合)に結集、何れは通貨・憲法までも共有しようとしている。北欧4カ国も又、歴史の上で様々の過去を払拭し、国内異論をも乗り越えて加盟を果たしている。今後このEUの動きは世界の大きな潮流として広がる気配にある。


今、我国では連日のように「日朝問題」で騒がしい。マスコミが煽る所為か、どう見てもエキセントリック過ぎる気がする。家族の思いは否定しないが、所詮独裁国家は歴史の上でも長続きするとは思えないのだし、お互い「隣国同士」、許せる所は許し、目を未来に向け進むべきではないだろうか。今更国を引っ越すわけにもいかないのだから。


「引越し」と言えば、故本田靖春氏が面白い表現をしていた。(「現代」12月号の記事)。「日本列島ごと何処か好い所へ引っ越そうか、日本人が好きなハワイがいいか、それともいっそカリフォルニア沖合辺りが良いかな、もう一度辛苦に耐えて次の代に再起を期したほうが良いかもしれない」と、氏の目には日本民族はこのままでは滅亡するのでは、との危惧から出た「だじゃれ」である。