EU③  その理念と機構

okamakoto2005-02-08

1.過去の戦争惨禍を共有

 欧州統合へのそもそもの出発点は、過去二回の大戦で戦い合い、欧州に戦争の悲劇を体験し惨禍をもたらしたフランスとドイツ両国の「惨禍の悲劇を繰り返してはいけない」の強烈な反省と責任感がある。その哲学的理念は悲惨な経験をした欧州各国の指導者や民衆にも広く共感を得て、ECからEUに更には通貨統合にまで至った、と考えられる。


2.アメリカ一国主義への警戒心
 二度に亘る世界大戦を通じ、勝者としてのアメリカが急激に帝国主義的一国主義の傾向を強めていく中で、ヨーロッパ各国は長い歴史から多くの事を学んできている。陸続きの欧州各国が経済的にも政治的にもまとまって力をつけ、アメリカの対極として発言していく事が世界平和の為にも必要だと考えているようだ。


3.市場経済へのアンチテーゼ
 効率を重んじ強者と弱者を峻別して「強勝弱敗」のアメリカ的市場原理は人間的平等社会を目指すヨーロッパ的民主主義とは相容れないものがある、弱者にも目配りし戦争のない世界を目指す上で「平和のコスト」は戦争に比し断然低廉だし負担すれば良い、の考え方である。(EU統合成功の陰には経済力で優位にあるドイツがその中核的支援の役割を担っている現実がある)


4.主なEUの機構
  欧州委員会(参加各国の元首・首相代表者で構成、最高機関、毎年会議)
  欧州議会(参加各国から選出現在626名、議長は参加国で半年毎輪番)
  欧州理事会(専門部門として16の理事会)
  他に、欧州連合理事会・欧州監査会計院・欧州司法裁判所・欧州投資銀行
  欧州中央銀行がある。


5.合意形成への努力と民主的運営
  1951年4月に6カ国でスタートしたECSCが、今日の25カ国加盟のEUに至るまでの50年間を垣間見るに、関係者の「合意形成へのたゆまぬ議論と努力の成果」があった、と言って良いと思う。通貨統合にも共通のガイドラインを設定し参加国はそれをクリアする努力を重ねている。現在、欧州統一憲法が審議されているがその討議資料だけでも5万ページに亘る膨大なものと聞く。「統合が最終目標ではない、合意の結果が統合であるべきだ」この一言の中にEUの目指す方向が見えるように思う。