EU④ 「アジア経済圏構想」

okamakoto2005-02-09

幻となった「アジア経済圏」構想

 日本に於いても、EU発足当時、時の宮沢首相が「アジア経済圏構想」を提唱した事があった。中国・韓国・マレーシア・タイ等東南アジア諸国と連携し経済的に立ち遅れているアジア諸国と連携する事がこの地域のために必要との宮沢さんの卓見だった。


ところが、すかさずアメリカからの反発が出て以後この構想は何時の間にか沙汰止みとなってしまった。アメリカの反発が如何程だったのかは判らぬが、今から考えても誠に残念なことであった。宮沢さんはその直後に自民党分裂もあって首相を降りている。(平成5年8月非自民6党連立細川内閣へ)


当時、それまで、マレーシアのマハテイル首相がしきりに「ルックイースト」(日本を見習おう)と言い続けていた。宮沢構想当時の日本の経常収支は黒字基調で推移(当時日本は対前年比40%近い経常収支黒字増加基調であった)、経済力でも名実共に「アジアの盟主」たり得たと思われる。
その地域に統一通貨制度を導入するには弱小他国を牽引する中核的国がないと成り立たないのはEUを見るまでもない事である。EUの場合日本と同じ敗戦国で、戦後目覚しい復活を遂げたドイツがフランスと協力し合って両国がヨーロッパ統一経済協力体制づくりに中核的役割を果しているのである。


現状、中国が目覚しい発展振りを見せていて、貿易指数でも日本を凌駕している。(日経1月27日記事)残念ながら当分日本が東南アジア地域で主導できる状況にはないように思える。マハテイルさんもその後「日本を見習おう」とは言わなくなってしまった。


尚、EUの場合、統一基準として参加国に一定のクリアすべき基準ラインを設けている。
EU統一通貨実現の際に各参カ国に求められた「経済収斂基準」の内主要な項目は下記3点であった。
① インフレ率・・・最もインフレ率が低位の3カ国の平均より1.5%以内である事。
長期金利・・・最もインフレ率低位の3カ国の平均値から2.0%以内であること。
財政赤字・・・政府財政赤字GDP比3.0%以内で財政赤字が過大でない事。


日本は上記の内①②については問題ないのだが財政状況が悪すぎるのである。EU統一通貨ユーロ採用に際して、この基準に到達する為相当な努力を払った国もあったと聞く。