組織本能


その事が又「因」となり「果」となって行く、事件の隠蔽結果が、更なる組織の弛緩と紊乱を招き、同時にそれが政治の混乱と右翼勢力の跋扈を引き起こした。昭和初期に相次いだ「5・15事件」、「2・26事件」、「3月事件」、「10月事件」等は軍内部と右翼との連携であり、「浜口首相暗殺事件」や「天皇機関説」をめぐる右翼団体の跳梁も、元を正せば軍の肥大化と政治への関与とは無関係ではなかった。


組織肥大化の現象は放任していても、自然に法則通り増殖するのだが、一旦縮小しようとなると大変なエネルギーを必要とする。恐らくこれには既成の組織の抵抗を排除しつつ進むと言う意味では、私見ながら十・二十倍のエネルギーを必要とするのではあるまいか。


細胞が自己増殖の結果自己死滅する如くに、軍組織は結果的に、「軍」そのものだけではなしに、「国民全体」をも巻き込んで「自殺的戦争」へと突入した。軍組織が国全体を破滅に追い込んだのが「太平洋戦争」の実態ではなかったのか。