ところが30年代以降に入って今日まで、いわば息の長い「逆コース」が続いている。それが可能になったのは、岸氏のような戦前的価値観を引きずる政治家や政党が淘汰されず、国会の議席を占め続けてきたからではあるまいか。
原彬久著『岸信介証言録』(毎日新聞社)によれば、岸氏はいみじくも「戦前と戦後の間には、断絶というものはない」と、明確に回答している。
昨今の危険なナショナリズムの勃興は、突き詰めてみれば戦前からの人脈が切断されず、「戦前的なるもの」の負の構造とDNAが戦後にも継承され、復活してきている証明ではあるまいか。
(写真は東京・三田慶応大学入り口付近)