「アナウンサー志望」

okamakoto2006-01-28



実は、S君「家出」の直接の切っ掛けは、「お前、家業を手伝いたくないからだろう」の兄の一言からだった。それに対し「俺は三男、何れ家には不要な存在だ、アナウンサーを目指したい、昼も勉強させてくれ」そのようなものだった。


「アナウンサー」と聞き「一笑に付した」家族と、兎も角「このまま埋もれたくない」と思うS君、その事を聞いた自分も「夜学ではとてもムリだ」、「でも何とかやるだけはやらせてみたい」だった。


然し結論から先に記す。彼は初志を貫徹したのだ。
家出して来て意外な「きっかけ」があった、それも「家出」で、時間を持て余していた結果かもしれない。


私の雑然とした部屋を整理してくれていた際にだった。偶然に、本棚の中から彼自身の手で彼の運命を手にしたのだ。


本棚に「神田YMCAのパンフレット」が目に入ったそうだ。それは以前私が、そのうち「英会話講座」でもやってみるか、の思いで取り寄せすっかり忘れていたものだった。


その中に「アナウンサー養成講座」があったそうだ、彼は家出後幾日も経ずにパンフを見つけ、YMCAに行き講師の面接も受けて、何とか受講者の一員に選ばれた由。


講師はベルリンオリンピックで「前畑頑張れ」の歴史的実況放送で有名になったベテランの元NHKアナウンサー松内則三氏、S君は氏に素質を見出されて、それ以来大変目をかけて頂いたと聞いた。


その後、彼は大学卒業と同時に「夢」のNHK入りを果たす、それも「東京の中央放送局」の錚々たるアナウンサーの一員に加わる事となった。