ある決心


その後お互い地方と東京で文通をし合い結婚する事にした、処が結納を納める直前に地元支店に転勤となった。彼女の叔父さんが銀行役員格だったのを良い事に、母が「帰してくれ」と頼み込んだ経緯は後で知った。


彼女にしてみれば東京に行ける、と、どこかで思っていたに違いないのに、である。若い時は誰でもそうだろうから。


さて、結婚後彼女は慣れない農作業を続けた、それも翌年生れた「乳飲み子」をおんぶしながらである、田舎育ちと言いながらもそれまでは一度も田畑へは出た事がないというのに、であった。


実は色々な家庭内の事情もあって彼女は「何度泣いたかしれない」、と(後で)しみじみ洩らした。実際にそのようだったろうと思う。


それやかやで、自分はかねて考えていた事を実行に移す決心をした。これは東京に居た時、既に心に決めていた事である。



(吹雪のホクホク線新潟・越後湯沢駅