移転先


結果的には、母は「東京までは行きたくない、「T市なら移っても良い」であった。T市には二番目の姉が嫁いでいて夫は歯科医を営んでいた。勿論母は渋々だったがそれで方向は決まったのだ。


問題の一つは田畑の返還交渉だが、必ずしも円滑には進まなかった、然し交渉が難航した末、最終的には「預けている半分は無償で差し上げる」事で円満解決させた。


村の長老の一人に実情を話し事後の協力も得た、紆余曲折もあったものの、家の屋敷跡の敷地や墓はそのまま現地に残す事とした。(敷地は後日姉夫婦のものとなった)


幸いに、村の何人かの方のご協力もあって、田畑や、家・土蔵(2)等の買い手もついた、それらは殆ど近所の方であった。大きいだけが取り得の母屋は、遠くの方が一旦解体して運び、建て替えると言う事だった。


実際には、これら総てが順調に運んだわけではない、例えば、近くに住む姉夫婦は最後まで「反対」し続け、自分の留守中に家に来ては母の気持を「ひがませて」いたらしい。