「占い師」


ここで、何故「南」だったかを白状すると、辞表を出して2―3日後の夜のこと、帰宅途中の新宿西口で「ろうそく明かり」の下で、何人かの「手相占い師」が並んでいて、その一人に手招きをされて、占ってもらった事があった。


自分を見るなり、彼は「貴方は今大変な事をしようとしている」「これは貴方の将来にとって重大な事だ」と言う。図星を指されて、正直「冷たいもの」が背筋を走った。


今まで「占い」や「八卦」は信じてもいないし、やってもらった事もなかった、むしろ毛嫌いして避けていた方だ。


その時だけは思わず「ではどうすれば良いのか」と問うた。「鬼門を避けねばならない」、「貴方の場合、方角としては南しかない」、「引っ越すならその方向だ」と言う。


「あえてこの占いに逆らう事もないだろう、今度の移転先は南にしょう」と、その時自分だけで密かに決めていたのだった。