運輸業界

okamakoto2006-03-14



それにしても実に長い期間であった、都内の主要各社には頻繁に顔を出して担当者とも懇意になり、上層部とも理解を得べく努めていた、従って業界状況はよく飲み込めたし、何れ近い内に事業は「陽の目を見る」と、確信はしていた。


交通運輸事業は免許事業であり、各社とも長い伝統のもとで真面目さと堅実さ、律儀さが社員の身についている、その点では銀行と企業風土も相似している。


更に付け加えると交通事業者は職業柄「時間観念」に厳格であり、当然の事ながら約束ごと、特に約束時間を守って行く事が信用上で最も留意すべき事として心掛けていた。


交通事業にも、公営交通のように官庁組織、鉄道系、オーナー系等あるが、共通して皆さんが親切であり、歴史や企業風土の違いや特徴もあって、それだけに各社への訪問は大変に楽しいものであった。


例えば、都内主要12社の一社、K興業は「オーナー会社」だが、その中でO専務は社主の実弟で、社内では天皇のように怖い存在だった。


然し、自分が行くと、決まって、事前に「おい、やがてDが来るぞ」と、担当の方に自分の来社を「予告」されていたそうである。


それは、窓際にある専務席からは、下の道路を歩いて来るのがよく見えたからで、一旦信用を得ると、ユーモアもあって気配りのある方であった。


時折、横の椅子を指差し、「おい座って行けや」と、お茶の手配もして下さり、世間話に相槌を打ったりしたのも一再ではない。