株主の重さ

okamakoto2006-03-18



実はこんな事があった、この事は、もし自分がその立場だったらきっと「言い出していたに違いない」と思うので、既に35年も前の事で、「時効」とも考えるので記す事とする。


新会社が船出しても一向に先が見えない状況の時に、出資者Hさんから電話が掛かった、「一体その後何をやっているのか」「株主への責任をどう考えているのだ」「いや言い訳は良い、出資金を直ぐ返してくれ」と。


道理だったろうと思う、会社が出来て1年半も経つのに売上も立たない会社と言うのは株主として、とても許せる事ではない。


その時は、さすがに参った、今でもその公園近くに行くと当時の事が想起されて胸が痛くなる、ぐるぐると公園の中を熊のように回りながら頭を抱えていた。


考えた末、出資金を半年後支払の「約束手形」にして、手紙を添えて郵便局から送付した、半年後には事業が軌道に乗る、と思ったからだ。


然し、半年は意外に早く到来した、Hさんからは期日の2―3日前に電話があった、「期日には手形を取り立てに出す」だった。


銀行に居て「手形取立て」の怖さは判っていた、「不渡り」と言うのは万事休すなのだ、実はその時は、都内支店に兄貴とも慕うKBさんのもとを訪ねた、事情を総て話して「何とか融資を頼む」と頭を下げた。


KBさん暫く黙したまま、「君も銀行に居た事があるから判るだろう」「今、君が借りられる状態だと思うか」、それには返答の一言もなかった。


やや、時間が経ってからKBさん「でも個人としては何とかしてやりたいなー」と独り言、KBさん、机の引出しから一通の預金証書を取り出し、「これは自分の全財産だ、出納に回しておく」だった。


転勤族には金は無縁のもの、その事は自分が身に染みて知っている事だ、KBさんは全財産200万円を自分に託してくれたのだ。


自分はそれで命拾いして、危機を乗り越えた、それは今でも、とても出来得る事ではないと思っている。