街のドーナツ化現象


従来細い路地で結ばれていた歴史ある旧市街地は、絶えず自動車渋滞で混雑していたし、確かに交通面では難点もあった。だからだろう、この街も完全に「車社会」に適応した街に変貌しているのだ。


今度金沢駅西口広場から、立派な50メーター道路が県庁前方面に直線に伸び、この道路は新たな大通りと交差しつつ北陸高速道路に結ばれる。その両側には新たな高層ビル街に変貌して出先官庁商社のビルが立ち並ぶ。


大学移転後の丘陵地を貫く大通り周辺も又、新興住宅地として生まれ変わろうとしている、広い通りに面して夢のある名前の車庫付きの瀟洒な住宅街が、そこ、ここに整備されつつある。完全に「へその位置」が変わり、郊外に分散しドーナツ化現象が起きている。


これによってタクシーの運転手に言わせると「旧市街の中心部、武蔵から香林坊、片町にかけての貸しビルの半ばは、今や空き室になっている」と言わしめている。


市の中心部にあった住宅地は道路整備で今後も郊外に移転傾向が強く、公共交通も未だ未整備のこの市で、急激にマイカー・自家用自動車の重要度が増しているのだ。


由緒ある兼六公園や、金沢城、神社仏閣、近江町市場に至るまで、確かに今日も観光客で賑わっていた、然し若い学生の姿も減り、歓楽街も今一つ冴えないのが街の変貌振りではあるまいか。


交通の要衝「金沢駅」は、既に何れの新幹線乗り入れを前提にモダンな駅に生まれ変わり駅前広場は立体的になった。連休中の東京、大阪方面への列車は、どの列車もほぼ観光客で満席であった。


大阪方面は険しい越前海岸を、一方、東京方面は、越中平野を通り抜け、蒼い日本海と3千メートル級の北アルプスの合間を縫ってひた走る。「悲しみ本線日本海」である。



(写真は、特急「はくたか号」車窓から日本海を眺める)