「中田君」の思惑


処で、北田君の「花火事件」であるが、町内幹部会で「北田非難決議案」が採決に付され、ほぼ満場一致で採択された、非難決議の不参加乃至は反対に廻ると思われていた「中田君が北田君非難決議に賛成」を表明して町内に一斉に驚きが走った。


「北田非難決議」は、ボス米田の意を受け、お先棒を担いだ「日田君」が町内を駆けずり回り幹部会に提案して成立に漕ぎ着けたものである。国内の「花火アレルギー」に便乗し、得点を挙げたいとの「新家長」の思惑もあったらしい。


町内幹部会で、てっきり「北田君の味方」と思われていた中田君が、何故「北田非難決議案」に賛成したのだろうか、少なくとも露田君のように採決には参加しないだろうと思われていたのに。


「中田家」は、長い興亡の歴史を持つ家柄である、歴史から「盛者必滅」、「おごるもの久しからず」、「過去の歴史から学ばぬ者は滅ぶ」を知っているのだろう。それに、北田君の花火は、所詮『線香花火』の域だと。


町内に3万発もある「花火」は、既に全世界の人間を含む総ての「生きとし生きるもの」を、5―6回も焼き殺せるという。


本来なら「総ての花火を廃絶しよう」と声高に言うべき所なのに、1万発も持つ米田ボスに遠慮して北田の線香花火だけを言い立てる日田君だが、ここは「日田君」の顔も立て、「米田君」への貸しも作っておいて損はない。


何れ「北田君」の望む『北田―米田会談』へ橋渡しをして、中田家の威力を見せ付けてやろう、と。



(ある帆船展にて)