物が溢れ、心が亡くなった


過年に記したと思うが、自分はミャンマー(旧ビルマ)の軍事独裁政治体制は問題だとは思うが、ミャンマーは敬虔な仏教国で大変礼儀正しく、治安も良いし人間関係も健全で気に入っている。誘われて2‐3度同国を訪問している。


農林・鉱業・漁業以外にさしたる資源もなく、物質的には決して裕福ではないが、日本の明治時代のような素朴さがあり親切で、何よりも優しい心がある、仏教の象徴「パゴダ」にも目を奪われる。


過日、たまたまミャンマーでお世話になった知人宅に彼の母親が来日していて、日本のテレビを見ていて目を丸くしている場面に出くわした、勿論母親は日本語も判らないのだが、どこかの民放番組で「母親の子供殺し事件」をやっていた。


彼の国では想像も出来ない事件で、次々質問が出されるのだが彼自身説明に困惑し切っていた。その時の、母親の恐怖と驚きの表情が今になるも頭に焼き付いている。


先日、北アフリカ3国訪問のIさんのお話を伺った際にも、アルジェリアリビアチュニジアも実に素朴で人の関係がフレンドリーで、親切で笑顔が絶えなくて、どこで忘れ物をしてもちゃんと届いていた、と仰った。


自分達は小さい頃から「米粒の中に仏様がいらっしゃる」と教えられ育った、食事の時には合掌して戴いたし、残飯を残すと叱られ、大目玉を食らったものだ。


七十余年の人生を振り返っても、日本は今が最も物質的に豊かな時代であり、平和な時代でもある、然し同時に、反面で最も不幸な時代のように思う。


最近公共のバスに乗ったら車内放送で、「知らない人から電話があったら振込み詐欺と疑って、直ぐに警察に電話しましょう」と、何回もアナウンスしていた.これは平和な日本の話である。