「切り札」登場


昭和15年9月に陸軍は北仏印へ派兵、更に「日独伊三国同盟」締結(同9月27日)で、日米関係は最悪状況になった。その時の模様をワシントン大使館大使補佐官が「日米交渉秘録」にまとめている。緊迫した日米交渉を読み解くものとして抜粋させて頂く。横山一郎氏は当時海軍中佐、(後に少将)で、氏はこの後赴任した野村吉三郎氏と一緒に不眠不休で日米交渉に当った人物である。(史料「目撃者が語る昭和史」6巻「太平洋戦争①」)


野村大使は、元は海軍大将、退役後は学習院院長を務めるなど人望の厚い方で、第一次大戦中はワシントン駐在武官として、当時アメリ海軍次官だったルーズベルト大統領とは顔見知りで、お互い信頼し合う仲だったと言われる。日々深刻さを増す日米関係打開の最後の「切り札」として及川海軍大臣から懇願されての赴任だった。(野村大使の人柄については後で詳述したい)