「秀才」の共通性


これら3人に共通するのは「己自身」と、「自分の考え」に対する確信だったろうと思う、3人共、満州の建国に注力し、その勢いで対米戦争を推進した。秀才特有の自信である。三者とも天皇の戦争回避の意向を受けた近衛に逆らってまで強硬論の先頭に立ち、戦争路線をひた走った。


岸は東條と同じA級戦犯であったにも係らず出獄して7年後には日本の総理にまで登りつめて行く、アメリカ情報機関CIAとの関係も常に噂されたが、そこには秀才特有のたぐい稀な変わり身の早さや、保身術・処世術の巧みさを見るのである。


松岡は苦学力行の割に「思い込みの強い男」であったようだ。「ガリ勉」でのし上がった出世者に多いタイプで、その自信過剰が権力を持つと「善意の確信犯」になる、自分の意見が絶対だと思い込み、他人の意見を聞かない、いや聞けない「心の狭い強情者」である。外務大臣として最も不適切なタイプではなかったろうか。