市民が狙われた「都市攻撃」


前者は、サブ・タイトルが「66都市大空襲の悲劇」「何故市民が狙われたか」「米軍の極秘決定」とあるように、ドキュメント風のNHKの綿密な取材に基づく番組だった。


戦時中、アメリカは「終戦を早める為」、と称して、日本の木造家屋を焼失させる目的で、特殊焼夷弾を開発し、密集住宅地を次々焼失させる作戦を敢行した、その被害実態とアメリカ側の攻撃実施に至る経緯を探ったものだった。


都市焼失作戦は「日本の戦闘意欲をそぐ」の名目で始められたが、実際には、大量の焼夷弾を先ず外周部に投下し、住民の逃げる退路を遮断して中心部に爆弾を投下する等、非人道的手法を駆使したものだった。


更に、日本の各地で、低空で飛来したアメリカの戦闘機が、乗客を満載した運行中の列車目掛け、執拗な機銃掃射で戦争に全く無関係な多くの市民を殺傷した事件もあった。


敗戦が確定的な段階で広島・長崎への原爆投下が象徴的であった。これらの行為は本来ならば、アメリカの重大な「人道に反する国際協定違反事件」として糾弾されねばならぬものだろう。


その歴史的事実の一端をNHK取材班は丹念な取材と精緻な編集で纏め上げ、首脳部も敗戦60年を前に放送に踏み切ったものとして評価したい。