指導者の叡智

okamakoto2006-05-15



第二次大戦後、ヨーロッパで、かっては敵味方で戦った二人の賢明な指導者が、灰燼と帰した国土の上に立って会談し、「子孫に再びこのような愚かな戦争の惨禍を繰り返してならない」と、1950年歴史的な決断を下した。


「戦争は経済的格差が大きな原因」、と見抜き、先ずそれを取り除き、更に積み上げてい行けば「争いは必ず避けられる」と、フランスシューマン外相、ドイツアデナウアー首相はヨーロッパを「非戦の地域」とすべく先頭に立つべく握手したのである。


両首脳は手始めに、永年両国で帰属をめぐって紛争の火種となって来た国境地帯の「アルザス・ロレーヌ地域」の鉄鉱石・石炭資源の共同管理で合意し、近隣諸国にも呼びかけ、(イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルグ等と)ECSC欧州石炭鉄鋼共同体)設立に至った。


更にEEC(欧州経済協力体)、Euratom(原子共同体)と経済・原子力でも統合を積み上げ、73年にはイギリスや北欧デンマークアイルランド81年ギリシャ、86年スペイン・ポルトガルと輪が拡がり、半世紀間を経た現在、「EU25カ国」にも発展している。


長年に亘り幾度かの交戦を体験し、敵味方に別れて戦った相手国民と「過去の怨讐を超え」国境を撤廃し、何れは同一国家として通貨(ユーロ)を統一、人・物・金の流れを単一とする理想に向って着々と歩を進めて来ているのだ。


この非戦の広がりは今後の世界的潮流となっている。既にトルコや・東欧諸国を含め広くヨーロッパ中近東に及ぶ勢いである。勿論、非戦の理想を目指したのは、このECヨーロッパ連合が世界で最初ではない。


ヨーロッパは敗戦後の日本が、憲法戦争放棄を謳い非戦の理念を掲げたのを、お手本にしたのだ。更に国連憲章でも「非戦平和」が「人類普遍の目標」と高々と謳われた。


化学の進歩は戦争の様相を一変させている、第二次世界大戦の被害は、直前の第一次大戦の優に10倍を超えるものとなった、核を手にした人類はこの後、戦争で地球を破滅させるか、それとも非戦の叡智の道を選ぶかの岐路に立たされている。


日本を始め、ヨーロッパ・北欧・東欧・ロシア・中国等では幾度かの戦争で国土が戦場となり廃墟と化してお互いが悲惨な戦争の体験を持つ、それ故、どの国も戦争の惨禍と愚かさを熟知している。