「散るぞ悲しき」が「悔しき」に改竄


今年の第37回「大宅壮一ノンフィクション賞」は、戦後1961年生れの梯久美子(かけはしくみこ)さんの新潮社刊「散るぞ悲しき」だった。


太平洋戦争末期、圧倒的米兵の前に2万人の守備兵全員が玉砕し果てた硫黄島総指揮官栗林忠道氏にスポットを当て、壮絶な最後を遂げた日本兵の最後と戦闘を遺族への手紙等から画いた作品だった。


栗林中将の大本営への最後の決別電報は「弾薬もなく」、敵軍に「徒手空拳」で「散るぞ悲しき」だったが、大本営はこの電報を改竄してしまったと言う。「徒手空拳」は抹消され、「散るぞ悲しき」は「散るぞ悔しき」に変っていた。


大本営作戦の失敗を第一線将軍から指摘されたと受け止めたか、「以降の戦意に係る」と思ったのか、何れにしても「戦死者の辞世の歌」までも改竄すると言う独善に陥っていたのだろう。