2006-02-01から1ヶ月間の記事一覧

新居の母

田舎の旧い家からT市に移った母は、幸いその地区が市の開発地区で、発展途上だった事もあり、近隣の方もお互いが親切で、母も溶け込んで満足げにしてくれた。 庭に、狭いながらも野菜畑を設けたので、母は菜園を愉しみ、手作りで胡瓜・トマト・ナス等を育て、…

「モノには魂がある」

その日も勤め先の仕事が遅くなり、帰宅は深夜、月明かりで四囲をうっすら浮かび上がらせていた晩秋の夜であった。 妻と子達が待つ家路を急ぎつつ、何時ものように家を目の前にして歩を進めていた時の事である。一角の明かりの点いた部屋が妻子の待つ部屋であ…

回想

年令のせいだろうか、この頃、寝つきも悪く、又、夢を見る事も多くなった、不思議な事だが、その夢に出る「吾が子たち(二人)」は、決まって未だ「よちよち歩き」の幼い頃である事が多い。 二人の子供も、幸いに今では共に孫もいる年令で、夫々が一家を成し…

「トンネルを抜けると」

所用を兼ねて昨日(2月2日)から北陸入りをした、上越新幹線で長いトンネルを抜けた途端に越後湯沢から一面雪景色に変り、寒さも一入り身に沁みる。 小春日和の東京に住んでいると、北国の豪雪は他所事のようにさえ感じられるのだが、このように「日々の幸せ…

親族会議

或る日、長姉が「親族の一大事」とばかり、昔からの親戚20人以上も集め、母を同席させて「親族会議」を招集したらしい、代表2−3人で夜遅く帰宅した自分に「反対決議」を突きつけて来た事もあった。 その結果、出席者の親戚一軒一軒を訪ね歩き、頭を下げ、現…

移転先

結果的には、母は「東京までは行きたくない、「T市なら移っても良い」であった。T市には二番目の姉が嫁いでいて夫は歯科医を営んでいた。勿論母は渋々だったがそれで方向は決まったのだ。 問題の一つは田畑の返還交渉だが、必ずしも円滑には進まなかった、…

田舎の家の整理

「息子」が、何代も続いた「家を整理しよう」と言い出したので、さぞかし母も困惑したのだろう。付近に嫁いでいた長姉夫婦のもへ駆け込み、その後は長姉夫婦が専ら阻止に動いた。 自分は、ここは母を説得する以外に道はないと感じ、朝晩、根気よく母への説得…